お笑い用語「かかる」はもともと、競馬用語だった⁉
お笑いの世界で、若手がガチガチに力んで空回りしているとき、先輩たちが「あいつ、今日えらいかかってたな」なんて苦笑いすることがあります。
この「かかる」という言葉、実はお洒落な業界用語ではなく、競馬の世界からやってきた泥臭い表現なんです。
元をたどれば、レース前の競走馬が興奮しすぎて、ジョッキーの制御が利かなくなってしまう「入れ込み」の状態を指します。
今回は、この「かかる」という現象が、いかに芸人のスタミナを奪い、自滅に追い込んでしまうのか、そのメカニズムを解説します。
かかった馬は、ゴール前でガス欠状態に
競馬で「馬がかかる」というのは、馬がやる気になりすぎて、序盤から「走らせろ!」と猛烈にハミを噛んで突進してしまう状態。
馬だって生き物ですから、ペース配分を無視して最初から全力疾走すれば、当然スタミナは持ちません。
本来なら最後の直線で爆発させるべきエネルギーを、道中の無駄な踏ん張りで使い果たしてしまう。その結果、一番大事なゴール前で脚が止まり、ズルズルと後退していく。これが競馬における「かかる」の怖さです。
ちなみに日本競馬を大きく進化させた大種牡馬サンデーサイレンス(ディープインパクトのお父さん)の馬は、気性が悪く、エアシャカールなど、かかる馬をたくさん送り出しました。
お笑いの「かかり」はなぜ危険なのか!?
この「かかる」状態、実はお笑いの舞台でも全く同じことが起こります。
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テンションの空回り
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間の詰めすぎ
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客観性の欠如
舞台上での「かかり」は、演者と観客の間に壁を作ってしまうため、なるたけ避けたいものです。
制御(コントロール)というプロの技術
一方で、売れている芸人やベテランは、この「かかり」を完璧に御(ぎょ)しています。
彼らは自分が今、レースのどの位置にいて、お客さんがどれくらいの熱を求めているかを、まるで名ジョッキーのように冷静に判断しています。
ここぞという場面でエネルギーを爆発させるために、道中はあえて「引き」の計算をしているわけです。
舞台でメタ認知できているお笑い芸人ほど、かかってもすぐ平静な状態に自分を戻す術を身につけています。
お笑い芸人には騎手と馬の2つが必要
誰だって、人生がかかった大舞台なら、馬のように鼻息を荒くして突っ込みたくなるものです。
ビートたけしさん、さんまさんは「舞台前に緊張しない芸人はダメ」と口をそろえました。
「かかる」というのは、裏を返せば「この舞台で絶対に結果を出したい」という高い熱量の証明でもあるのです。

