お笑い用語「天丼」とは、どんな笑い?

「天丼」という言葉を聞いたとき、まず浮かぶのは丼ぶりの方でしょうか、それとも笑いの手法の方でしょうか。

お笑い用語だと思われたあなたは、お笑い通ですね。

 

お笑いにおける「天丼」とは、一度ウケたボケやギャグをあえて繰り返すことで笑いを重ね、増幅させる技術のことです。

今では芸人がごく自然に口にするこの言葉として、業界で定着しました。

 

天丼の語源

まず広く知られているのが「海老天2本説」です。天丼には必ず海老天が2本乗っているのがお約束であることから、「同じものを2度重ねる」というイメージで笑いの手法を指すようになったという説です。

わかりやすく、語呂も良いので思わず「天丼やん」と口にしたくなるのかもしれないですね。

繰り返しは、なぜ笑いを生むのか

語源の話だけで終わらせてしまうのはもったいないので、なぜ「繰り返し」が笑いになるのか、そのメカニズムを考えてみましょう。

初めてボケを聞いたとき、客は「予想外の展開」に笑います。これは心理学でいう「不一致理論」、つまり期待と現実のズレが笑いを生む、という基本原理です。

ところが2度目、3度目と同じボケが繰り返されたとき、客の脳内では別の反応が起きます。

 

「またあのボケが来るかもしれない」という予感と期待が生まれるのです。予想外だったものが、今度は予想内になる。しかしその「予想通りに来た瞬間」もまた笑いを生みます。「来た!」という確認の喜びがあるからです。

つまり天丼は、1回目で「裏切り」によって笑いを取り、2回目以降は「期待を満たす快感」で笑いを取るという、二段構えの笑いの構造を持っています。

具体的なボケの例で考えてみましょう。


「ドラえもんだらけ」は天丼構造

藤子・F・不二雄先生の「ドラえもん」に、「ドラえもんだらけ」というエピソードがあります。

のび太が「ドラえもんをもっと増やしてほしい」と頼んだところ、ドラえもんが未来から何体も呼び寄せられ、家中がドラえもんだらけになってしまうという話です。

最初の1体目が登場したとき、読者は「あ、ドラえもんだ」と普通に受け取ります。

ところが2体目が現れた瞬間、「え、また来た?」という違和感が笑いに変わります。

そして3体目、4体目と続くうちに「次も絶対来る」という期待が客席に広がり、ドラえもんが扉から顔を出すたびに笑いが積み上がっていく。

これが天丼の構造そのものです。

1体目は日常、2体目から笑いが始まり、それ以降は「また来た!」という期待の充足が笑いを生み続けます。

ドラえもんというキャラクター自体はまったく変わっていないのに、「何度も現れる」というただそれだけの繰り返しが強力なボケになっているのです。

 

ミルクボーイの天丼的漫才

ミルクボーイのM-1漫才は、同じ構造のボケを何度も重ねながら笑いが衰えませんでした。それは毎回のボケに微妙なバリエーションが加わり、「同じようでいて少し違う」という揺らぎが単調さを防いでいたからです。

厳密に言うと、ミルクボーイの漫才は構造の繰り返しであり、同じボケの繰り返しではないため、完全な天丼とは言い切れないかもしれません。

彼らは、漫才がとてもうまいため、同じ骨組みであってもテーマを変えるだけで、新鮮な笑いを提供できます。名人芸ですね。

 

お笑い塾でも「天丼」が生まれる瞬間

大阪お笑い塾の授業でも、天丼的な笑いが自然発生する場面があります。

コントの練習中、アドリブで出た一言がウケた後、意識せずに同じパターンを繰り返すことで2度目の大きな笑いが起きる瞬間です。

「あ、今のが天丼やったんや」と気づいたとき、「天丼的な笑い取り方ができていたので、他のネタでも再現してみてくださいね」とすぐフィードバックするようにしちえます。

笑いが才能だけではなく構造であることを体感する瞬間でもあります。

大阪お笑い塾の天丼の名手といえば、鉄道芸人のしろみずさんですね。

しろみずさんは、とぼけた佇まいが自然と出せる人でして、フラがききます。

「フラ」とは何かは、また別の機会に解説いたします。

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