上手いだけでは勝てない!?
ベテラン芸人が最近の若手のネタを見ると、口をそろえてこう言います。
「キャリア数年で、なんでこんなに上手いんや」と。
お笑い技術の底上げには、明確な理由があります。ひとつはYouTubeをはじめとした動画環境の整備です。
かつては寄席や劇場に足を運ばなければ見られなかった古今東西の名ネタが、今ではスマートフォン一台でいつでもどこでも見られます。良質なネタをインプットできる量が、かつてとは比べ物にならないほど増えました。
もうひとつは、舞台の多様化です。大学のお笑いサークルや社会人向けのカルチャースクールなど、プロの養成所以外でも経験を積める場が各地に生まれています。
舞台に立つ機会が増えた分、場数の踏み方も早くなりました。
しかしここで、新たな問題が生まれています。みんなが上手くなった結果、「流暢だけれど、印象に残らない」という状態が生まれやすくなっているのです。
技術が平均化されると、技術だけでは差がつかなくなります。
思い出されるのが、2010年のM-1グランプリに出場したスリムクラブ。他のコンビが次々とテンポよくネタを畳み掛けるなか、彼らだけがまるで別の空気を持ち込みました。独特の間、ゆったりとしたテンポ、粗削りとも言えるスタイル。
しかしその異質さが、審査員にも観客にも強烈な印象を残し、会場を大きく沸かせました。
つまり上手さが、必ずしも武器になるとは限らないのです。むしろ、磨きすぎた技術が個性を削ってしまうことさえあります。
粗削りでも、その人にしかない空気感や視点があるコンビは、完成度の高いコンビより記憶に残ることがあるのです。
「上手く話せるようになりたい」は大切な目標です。ただ、大阪お笑い塾が最終的に目指すのは、その先にある「あなたらしい笑い」を見つけることです。
