2026年9月27日 レギュラーコース「凹み由来の笑い」「ネタ見せ」
こんにちは。大阪お笑い塾の代表の高田豪です。
そろそろR-1のエントリーが始まりました。
今年は、芥子壺さんの「みんなでR-1に出ましょう!」と呼びかけで、多くの方がエントリーされています。
始めてR-1に挑戦される方もいるので、刺激的な体験になるのではないでしょうか。
率先して舞台に出続けて、みなさんを引っ張ってくださる芥子壺さんの存在が、大変、心強いです!
こちらは同日の午前に行われたビギナーコースのレポートです。ぜひお読みいただけると幸いです▼
ネットラジオに此花六丁目さんが出演!
まずはネットラジオのお知らせからです。
今年M-1に挑戦された此花六丁目さんが、R-1についての意気込みを語ってくださっています。
下記の画像をクリックいただきましたら、ネトラジのサイトにジャンプいたします▼
人は、凹んだままではいられない
今回は、お笑いなど自己表現をする人のマインドについて講義いたしました。
心の中に生まれた凹み、つまり満たされない欲求、消化しきれない感情、社会的に受け入れられない衝動を、人はそのまま抱え続けることができません。何らかの形で、それを解消しようとする力が、無意識のうちに働きます。
心理学には「昇華」という概念があります。フロイトが提唱し、娘のアンナ・フロイトによって防衛機制のひとつとして分類されたこの考え方は、社会的に実現不可能な欲求や葛藤を、そのままの形で発散するのではなく、より高次で社会に認められる目標へと転化し、実現していく心の働きを指します。シンプルに説明すると、
欲求が満たされなかった経験を、
直接誰かに向けるのではなく、小説の登場人物を通して描く
社会への怒りや不満を、
直接的に攻撃・破壊するのではなく、歌詞という作品にして発信する
ということですね。
満たされない、あるいは表に出すことのできない感情を、そのままにするのではなく、表現という形に変換して外に出す。
これこそが昇華のメカニズムです。
お笑いという表現もまた、同じ構造を持つ
これまでにも何度か書いた、笑いの構造を思い出してください。ボケは自分の失敗や劣等感を、自虐というボケに変換することで、誰の価値も下げずに笑いを生み出します。
以前触れた「悲しみの中に笑いを見出す」構造、あるいは「怒りを笑いに変える技術」——これらはすべて、心の中の凹みを、そのまま抱え込むのではなく、表現という形に変えて外に出すという、昇華の一形態だったと言えます。
お笑いを目指す人の中には、実生活で満たされなかった何か、うまく言葉にできなかった鬱屈、周囲との違和感を抱えている人が少なくありません。
舞台に立ち、その凹みをネタという形に変換して観客に届けたとき、初めてその凹みは、単なる痛みではなく、価値のあるものへと転化します。
「一発逆転病」との、決定的な違い
「一発逆転病」も、根っこは同じ凹みへの反応です。しかし、その対処の仕方が、昇華とはまったく異なります。
昇華:凹みを、時間をかけて表現に変換していく(地道な積み重ね)
一発逆転病:凹みを、外部の記号(憧れの対象、ステータス)で
一気に埋めようとする(逃避的な埋め合わせ)
心理学的に見ると、昇華は「成熟した防衛機制」に分類されます。凹みをそのまま消そうとするのではなく、社会的に価値のある形に育て上げていくプロセスだからです。
一方、一発逆転病的な埋め合わせは、凹みそのものと向き合うことを避け、外側にある何かで一時的に覆い隠そうとする行為です。覆い隠しただけの凹みは、いずれまた表に出てきます。
非現実な夢に逃げているだけでは、自信がつくことはないのです。
なぜ、人は表現せずにいられないのか?
芸術家が自己顕示欲を昇華の力によって作品に変えているという指摘があるように、創作という行為は、単なる技術の発揮ではなく、内側にある凹みを外に出さずにはいられないという、ある種の本能的な衝動に近いものです。
漫才、コント、落語、大喜利——お笑いという表現形式もまた、この本能の発露のひとつかもしれません。
舞台に立つ人は、意識的にせよ無意識にせよ、自分の中にある何かしらの凹みを、笑いという形に変換して外に出しています。だからこそ、優れたネタには、単なる技巧を超えた、その人固有の切実さが宿ります。
積み重ねることでしか、昇華は完成しない
重要なのは、昇華というプロセスには、時間がかかるという点です。一夜にして凹みが表現に変わることはまずありません。
最近、さまざまなライブで頭角を現すようになった芥子壺さんも地道に舞台に立ち続け、少しずつ自分の得意なもの、自分固有の凹みの活かし方を見つけていきました。
芥子壺さんの今のアイテムを使った独自のネタのスタイルができあがるまでに、やはり時間を要しました。この積み重ねの中でこそ、凹みは徐々に、価値のある表現へと育っていきます。
一発逆転を狙う人は、この時間をかけるプロセスを飛ばそうとします。
凹みは、外部の何かを借りてくることでは埋まりません。
自分自身の凹みと向き合い、それを長い時間をかけて自分の言葉、自分のネタへと変換していく。この地道な作業こそが、本当の意味での回復であり、創造の源泉なのです。
凹みは恥じではなく、あなたの素材である
お笑いを学ぶ上で、大切な視点があります。自分の中にある凹み——コンプレックス、失敗、うまくいかなかった経験——を、隠したり、恥じたりする必要は少しもないのです。
それは、あなたの表現の、最も貴重な素材になり得るものです。
人は凹んだ状態のままでは耐えられません。だからこそ、表現という手段を通じて、その凹みを昇華させようとします。
この無意識の動きや本能を正しく理解し、時間をかけて育てていくこと。それこそが、お笑いという創造的な活動に取り組む、すべての人にとっての出発点なのだと思います。
ネタ見せ
レギュラーコースでは、毎回、授業の後半にネタ見せの時間を設けています。
次回の主催ライブが、11/7(土)ですので、そちらに向けたネタが発表されました。
今回2本のネタを引っ提げてやってきたKさん。

どちらもネタもしっかり笑いをとっていました。
着目すべきは、ネタの構造です。
笑いの基礎は「演者の困り」です。
Kさんは、キャラが不条理な状況に巻き込まれていき、右往左往するというネタを作るのがかなり得意ですね。
この構造は、他のネタでも応用がきくので、ますますたくさんのネタを作れるのではないでしょうか。
お笑い塾への入塾以来、どんどん新風を巻き込んで、盛り上げてくれています!
M-1へ出るなど、しっかり積み上げている、おうじさまず。

今回は、写真左側の此花六丁目さんが、おねえっぽい占い師をするという新境地のネタ。
この役柄がバッチリはまって、大きな笑いをとっていました。
ボケを担当すると天下一品の、此花六丁目さん。
ツッコミ担当の高橋さんも、トーンをあえて落とし気味にして、ふたりの波長のバランスをとる工夫をしていました。
面白いネタに仕上がりそうな予感が、かなりいたしました。
年内最後の「OSAKAお笑い寄席」は、11/7(土)にライブ喫茶亀で開催されます。
次回も、またお笑い寄席に向けた熱量高いネタが披露されることでしょう。
最後まで、お読みいただきまして、ありがとうございました!
高田豪(大阪お笑い塾・代表)


