2021年6月の授業レポート①「桂米朝の暗黙知→形式知」「主観的にやりたいこと、客観的に求められること」

先週は梅雨の中休みという感じで、天気が良かった日も多かったですね。

みなさん、いかがお過ごしでしょうか?

先日、ライブ喫茶亀で開催された大阪お笑い塾のライブ『OSAKAお笑い寄席』は多いに盛り上がりました。

ライブ自体にお客様がついてきたこともあり、塾生のみなさんもやりやすそうでした。

高橋さん、アカソフさんのコンビ『怪盗グリーン』が初MCを担当したのですが、しっかりと役目をはたし、温かい雰囲気でネタがスタート。

こちらは怪盗グリーンの高橋さんと、エンラエンラ碓井さん。

授業の前にネトラジ収録があり、塾ライブについて冒頭で語ってくれておりますので、もしよければお聞きくださいませ▼

お笑い塾ラジオ→http://manradi.seesaa.net/archives/20210613-1.html

ちなみに高橋さんも、碓井さんも同い年、凹凸がしっかり合うのか、普段のしゃべりでもボケとツッコミが自然が成り立つため、思わず吹き出すことも。

2021年6月最初の授業は「暗黙知と形式知」

さてそれでは授業レポートに入ります。

本日は、暗黙知と形式知のお話からスタート。

暗黙知の語源は、物理化学者、社会科学者、哲学者のマイケル・ポラニーが発表した『暗黙知の次元』にあります。

マイケル・ポラニーは、暗黙知を科学哲学上の概念としました。

このポラニーが提唱した概念を、社会に広めたのは野中郁次郎さん。野中さんは2002年に紫綬褒章を受章した日本有数の経営学者さんです。


【暗黙知】

・主観的

・個人的

・経験的

・身体的


【形式知】

・客観的

・理性的

・組織的


ざっくりいえば、暗黙知は右脳的で、形式知は左脳的な要素を持つものとなります。

形式知が言語化しやすいのに対して、暗黙知は言葉のみでは伝えづらいもの。

例えば自転車を乗りこなせる人が、乗ったことのない人に言葉だけでそのコツを伝えるのは至難の業。

空手の通信教育は、暗黙知を形式知のようなパッケージに偽装している感すらありますね(笑)

究極の暗黙知人間・長嶋茂雄

よく使われる例えで、長嶋茂雄さんは暗黙知の人で、野村克也さんは形式知の人だといえます。

カリスマや天才と称される人が、なぜ後継者に恵まれにくいかといえば、己の再現が極めて難しいから。

かつてナイナイの岡村さんが早稲田大学合格を目指して、ガチ受験するという企画がありました。

有名大学在学中の家庭教師が入れ替わり立ち代わり現れて、岡村さんに勉強方法をレクチャーします。

この企画でとある家庭教師が岡村さんに「あなたがなぜこの問題を解けないのかが、僕にはわからない…」と真顔で言ったのだとか。

優秀過ぎる人は、そうでない人の感覚や気持ちが本当に理解できないかもしれません。

長嶋さんのように唯一無二の存在ほど、同じような人は二度と現れないのでしょう。

形式知だったノムさん

「王や長嶋はヒマワリ、私は月見草」と例えていた野村克也さん。

花形V9の巨人に比べ、当時は人気のなかったパリーグで現役を送った野村さん。

通算ホームラン数は、王貞治さんの868本に次ぐ657本で、日本2位にもかかわらず、やはり印象はミスターの方が圧倒的に強いのも事実。

野村さんは、暗黙知を形式知に変えわかりやすくノウハウ化し、自身の継承者を多数輩出した人でした。

ざっと挙げるだけでも

  • 稲葉篤紀さん
  • 高津臣吾さん
  • 宮本慎也さん
  • 辻発彦さん
  • 平石洋介さん
  • 矢野燿大さん

など野村さんの薫陶を受けた人が、現在でも球界で指導者として活躍しています。

暗黙知→形式知の変換作業こそが大切

野村さんの功績は、自身が現役時代に蓄えたノウハウを言語化して具体的に伝えたことでしょう。

『野村ノート』というわかりやすいテキストを残し、そこに記されていた野球に関する叡智は今でも脈々と受け継がれています。

実はこの「暗黙知→形式知の変換」こそが、とても大切な行為

すでにマニュアル化、テキスト化されていることは、誰かの功績に乗っかっているに過ぎませんし、超情報化社会では新たなマニュアルが出回り、手垢がついてしまうのもスピーディー。

人が作ったシステムに依存してばかりでは、脳が活性化しませんし、身体レベルにまで落とし込めないのです。

こちら↓はお笑い塾の才女、畠山さん。

※中指を立てているわけではありません(笑)

彼女は会社での業務を後輩に教える際に、独自のマニュアルを作って渡す役割を担っていると教えてくれました。

これはまさに暗黙知→形式知の変換。

合理主義で無駄をショートカットしたい性格の畠山さんは、本質を見抜く力に長けています。

桂米朝が果たした功績

落語家が一人前になるまで、師匠のもとで修業を重ね、数年経つと年季明けとなり弟子入り期間が終了となります。

落語の世界は、未だに徒弟制度が残っており、「師匠の芸や背中を見て盗むべし!」という暗黙知領域が色濃く残っています。

上方落語の世界で暗黙知を形式知に変換した第一人者といえば、桂米朝師匠でしょう。

桂米朝師匠は、前記した野村さんと同じようにそれまで言語化できなかったものを、わかりやすい形式に残すことをしました。

知性に長けた米朝師匠はアカデミックなアプローチで、落語の記録を書籍や音声資料に次々と残します。

古典落語の時代的な整合性のとりかたへ考慮していた米朝師匠が、後世に残した実績は、はかりしれません。

晩年、米朝師匠が玄孫弟子(孫のそのまた孫というポジション)に恵まれたのは必然だったといえます。

都市伝説かもしれませんが、ある落語家さんが弟子に古典落語を教える際、米朝師匠のDVDかCDを渡して「これで勉強しとき…」と伝えた逸話があるというのも、米朝師匠が暗黙知を形式知に変えられる方だったからこそ、信憑性があるように感じますね。

塾生ネタレポート!

かたい話が続いたかも?なので、ここからはネタ見せについてのレポートとなります。

今回のネタ見せで、パフォーマーの多くが陥る悩みがわかりやすい形で出た場面がったので、そちらをお伝えします。

エンラエンラ碓井の葛藤

エンラエンラ碓井さんは、2本のネタを披露してくれました。

1本目

 

2本目

ざっくり要約すると

1本目→碓井さん演じる劇団員が、観覧に見に来てくれた友達と話すコント

2本目→英語が話せない碓井さんが、アメリカ人相手に悪戦苦闘するコント

碓井さんは1本目のコントに対しての思いが強く、微調整を重ね試行錯誤してきました……が結論からいえば受けは2本目の方がよかったのです。

この反応が碓井さんからすると、意外だった様子。

「2本目の方がわかりやすく伝わりやすい」「碓井さんのキャラ自身が、右往左往するポジションにマッチしている」などの意見が出ました。

お笑いは芸術活動の一環ではなく、エンターテイメントの一種なの「伝わっているか?」が大切になります。

もちろん万人受けしづらいものでも、普遍性があり一部で絶賛されるものもあるでしょう。

どちらを選択するかは、当人の自由ではあるものの、碓井さんが抱える葛藤や、主観的評価と客観的な評価の違いなどは、全演者に共通する悩みといえるでしょう。

演者がやりたいことお客さんがその演者にやってほしいことはしばしば乖離が起こるもの。

自身のこだわりのみを追求しすぎると、お笑いから遠ざかることもあるのが難しいところかも?

しかし、強いこだわりが面白いネタを生み出すものなので、上手く自身のこだわりを客観視して、他者に伝わる形でネタに落とし込むことが重要になります。

芥子壺・青い化け物は進化を続ける!

暗黙知の極致ともいえる独自路線を突き進む芥子壺さん。

彼女が魂を込めて世に放つ青い化け物ちゃんは進化を続けます。

本日は2本の青い化け物ネタをしてくださいました。

色々な方向性を試して絞り、8/7の14時からの第6回塾ライブでお目見てする予定でございます!

黒猫が両肩に描かれた服が黒いインナーを同化させるようなデザインセンスを持つ芥子壺さん。

新体制になった塾に参加してくれて、一年以上が経過し今ではお笑い塾に欠かせない存在になってくれております。

ピンネタ&コンビネタと大忙しの怪盗グリーンアカソフ

アカソフさんは、ピンもコンビも全力でやり続けるスタンスの持ち主。

今回は、実験的なピンネタでしたが、最近、表情や感情表現が板についてきており、この前のお笑い塾ライブでも随所で笑いをとることに成功。

自身の魅力や受けやすいポイントを、しっかりと再現できるようになれば未来はかなり明るいでしょう!

ツッコミの高橋さんとボケのアカソフさんが組む怪盗グリーン。

キャラのコントラストがしっかりついており、必然性のあるネタになってきております。

一つのネタを研磨して、質を上げていくという地道なことができるようになったことは大きいですね。

積極的にたくさんのライブへの出演を重ねていますので、今後が楽しみです!!

というわけで、2021年6月のお笑い塾リポートでした。

近々またゲスト講演も考えておりますので、そちらが決まり次第お伝えいたします。

今年は梅雨入りが早く夏の訪れも早そうっ!

みなさん、大変なご時世は続きそうですが、笑いと笑顔を忘れずに前のめりで楽しみを見つけて生きていきましょう。

それではまた!!!

写真・文 高田豪(お笑い塾代表)

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