令和でも、びんぼっちゃまがまだまだ人気な理由

僕が小学校のころ「おぼっちゃまくん」が大ブームでした。

親からすると「お下品すぎる!」という内容でしたが笑、子供はああいう原始的でパワフルなギャグマンガが大好きなものです。

今はインドで大人気らしく、約30年ぶりに新作が制作されているというのですから、笑いの普遍性というのは国境を超えるものだと改めて感じます。

さて、おぼっちゃまくんは個性的なキャラクターの宝庫で、どのキャラクターを取り上げても、どこか落語的な味わいがあります。

なかでも僕がめちゃくちゃ面白いと思うのが、びんぼっちゃまというキャラクターです。上半身は燕尾服のようにきっちりしているのに、後ろを振り返るとお尻が丸出しというあの伝説的なデザイン。

笑いの基本は「ボケを隠すこと」にあります。

後ろ半分が丸出しであることをひたすら隠しながら生きているびんぼっちゃまという設定は、その笑いの本質をキャラクターそのもので体現していて、実にうまいと思うのです。

『水曜日のダウンタウン』でロバートの秋山さんたちが「びんぼっちゃまスタイルの服、立ち回り次第でバレずに一日過ごせる説」に挑戦した企画も、まさにこの本質を突いていました。

どこまで隠して、どこから崩すか。上品と下品の境界線は、演出次第でいくらでも変わる。スリルあふれる素晴らしい企画でした。

びんぼっちゃまは「おちぶれても元上流家庭」「おちぶれてすまん」という矜持を持ちながら、お尻を丸出しにして生きています。品位と滑稽さが共存しているからこそ、見る人は嫌悪ではなく笑いを感じるのです。

上方落語の大家・桂枝雀さんは「笑いは緊張と緩和でできている」と説きました。燕尾服のような正装(緊張)と、後ろ姿の全開(緩和)。高貴な言葉づかい(緊張)と、生活臭のする行動(緩和)。びんぼっちゃまの構造はまさにそれで、上品七割・下品三割くらいのバランスが、笑いをちょうどいい温度に仕上げています。

極端にどちらかへ偏ると笑いは成立しません。上品だけでは堅苦しく、下品だけでは不快になる。相反するものを絶妙なバランスで同居させたところに人間らしさが生まれ、観客が安心して笑える余白が生まれるのです。

ちなみに、おぼっちゃまくんのキャラで、生真面目すぎてボケになる折目正(おりめただし)くんという男の子がいました。

メガネをかけて、いかにも堅苦しい風貌をしており、口癖は「下品でござそうろう!」です。

マナーにうるさい彼のようなキャラも、デフォルメすれば笑いになるのです。興味を持った方は、ぜひ折目正くんを見てみてくださいね。

話をびんぼっちゃまに戻しましょう。「後ろ半分の生地がない」というデザインは、笑いの黄金比をそのまま体現した、極めて完成されたキャラクターだといえるでしょう。

高田豪(大阪お笑い塾・代表)

\ 最新情報をチェック /