現在、M-1の一回戦が行われている真っ最中。
昨年は、プロよりもアマチュアや社会人のエントリー数の方が上回りました。
2022年のエントリー数は、何と7,261組。
今年は、昨年に増してアマチュアや社会人芸人のエントリーが増え、「8,000組を超えるのでは?」と言われております。
今や社会人の傍ら、お笑い活動をすることがポピュラーになりつつありますね。
本日の授業は、まかなんで行われました。
まかなんでの講義は、毎回、座学が中心です。
M-1最初の10年は笑い飯の歴史でもあった!?
今年で19回目となるM-1グランプリ。
2001年から始まったM-1グランプリでしたが、2011年から2014年は開催されませんでした。
2015年の第11回から復活となり、それ以降は毎年開催。
本日は、2001年から2010年までのM-1グランプリで最も出場回数の多かった、笑い飯のおふたりに焦点を絞り、M-1前期の歴史を振り返りました。
こちらはノンフィクションライターの中村計の著書『笑い神』。
中村さんは、ナイツの塙宣之さんの『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』の聞き手を務められたり、2023年には岩崎う大さんと『偽りなきコントの世界』という本を出版。かなりお笑いに精通しておられるお方です。
『笑い神』は、スリリングな描写が盛りだくさん。ケンドーコバヤシさんから「お笑いの分析をしたり、裏側を暴こうとしてる中村さんが一番寒い」と責められたり、麒麟の川島さんが触れられたくない過去のM-1の話を強引に深堀してしまい「一体、何の話をしてるの?」と静かにキレられたりする場面も…。
分厚い本ではありますが、お笑い好きならきっと一気読みしてしまうほど、読み応えがたっぷり。
2001年のM-1グランプリは、初回の大会だったこともあり、審査方法も含め探り探りのところもありました。
ちなみにトップの出番で優勝したのは、今のところ初回大会の中川家のみ。
M-1が大きく動き出したのは2002年からでした。
2002年は、ますだおかだが優勝した回。彼らはM-1史上、唯一、松竹芸能で優勝を果たしています。
今回は、2002年のM-1決勝の漫才を鑑賞。
まだ笑い飯という名前が、大阪の一部のマニアックなお笑い好きの人しか知られていなかった頃、彼らに目をつけた放送作家の方がおられました。
ダウンタウンと数々の番組をされていた倉本美津留さんです。
粗削りだったものの殺気を放ちながら、命がけで面白いものを追求していた笑い飯。そんな彼らを発見し、猛プッシュしたのが倉本さん。
「さすがは倉本さん」と言いたくなるほど、その眼力は確かでした。
笑い飯は2002年のM-1から大旋風を巻き起こし、彼らが優勝をはたす2010年まで9年連続で決勝に残ります。
M-1の決勝に複数回、残った経験を持つ、笑い飯、千鳥、麒麟の3組はお互いの実力を認め合っており、麒麟の田村さん曰く「(3組の)中から誰か(M-1)獲ろうぜみたいな気持ちがあった」とのこと。
こちらの3組は、当時base吉本のピラミッドの頂点に君臨し、その後のNSCに入ってきた後輩に大きな影響を与えます。
M-1で優勝を果たしたのは、笑い飯のみでしたが、千鳥、麒麟はテレビタレントとして大成功し人気者の座を獲得。
笑い飯の功績は「面白さ原理主義」というゴリゴリのお笑いストロングスタイルを大阪に根付かせたことでしょう。
「お笑いにワーキャーはいらん、面白さだけが正義なんや!」という価値観を根付かせたのです。
大阪お笑い塾では、笑いのロジックなどを具体的にお伝えする機会が多いものの、最も大事なのは「腹を抱えて笑わせてやる!」という覚悟や情熱かも?
お笑いのフォーマットをネタに組み入れると、確かに安定しますし笑いはとりやすくなるものの、やりたい笑いのスタイルがなければ、フォーマットに依存し小さくまとまってしまうのも事実。
お客さんは、保守的で小さくまとまった笑いにワクワク感は覚えません。
近年のM-1を見慣れている人からすると、2000年代初期のM-1は殺気だったものがあり、今とは違う衝撃を覚えたようでした。
そして、今ではやらない方がいいとされている下ネタが結構な確率で披露されていました。
まだコンプライアンスが叫ばれる時代の前だったということもあります。
たまにはこうして過去のM-1を振り返るのもいいですね。
今だからこそ、わかる気づきがたくさんありました。
ネタ披露の時間
大阪お笑い塾の主催ライブである『OSAKAお笑い寄席』の第19回目が9/9(土)14時~ライブ喫茶亀で行われます。
2ヵ月に一度、隔月ペースで、3年以上続いてるライブなのですが、今年入られた新塾生さんがライブデビューされる予定。
お笑い寄席でデビューされる予定のお二方をご紹介しましょう。
おひとりめはケンさん。
ジャミラみたいな恰好をしているケンさんは、フリップネタに挑戦。
漫談も含めて色々なネタを試されてきましたが、安定した形が見つかりつつあります。
今回はあえてたくさんの要素を入れたネタを披露。
「ここから反応の良いボケをピックアップして残していきたい」とおっしゃっていました。
落語なども含めて貪欲なインプットを続けるケンさん。
非常に良いキャラクターをお持ちですので、この調子でアウトプットを継続していけば、きっとフィットするスタイルが見つかるはずです。
もうひとりの新塾生のミナさんもフリップネタ。
前回、恋バナの話をちらっとされていたミナさん。
今回のテーマはモテ期とモテ方について。
ボケる前のためがしっかりできており、毎回間がズレないのがミナさんの強み。
淡々と話すミナさんのトークに、見ている側はだんだんと引き込まれていきます。
これまでに他のネタも披露してくれている彼女ですが、どれも質が高く面白いものばかり。
「キャラと一致したネタは受けやすい」と、よくお笑い塾の講義の中でお伝えしていますが、ミナさんは客観的にご自身を観察して「こういうネタをすると受けやすい」というのを、すでに理解されています。
9/9(土)の本番で、どのネタを披露してくださるのか楽しみです!
高橋さんは、漫談を披露。
過去の自分が陥ったミスや悪循環などについて自虐を交えながら軽妙に語りました。
自分を下げることで笑いを取る自虐の笑いは、他者を傷つけない笑いの一種のため今の時代にマッチしていると言えるでしょう。
いつも創作意欲にあふれている芥子壺さんは2本のネタを披露してくださいました。
こちらは久々の青い化け物ちゃん。
衣装やアイテムと組み合わせることによって、また異なる風合いになりますね。
こちらはもう一本の芥子壺さんのネタ。
スカシボケを上手く取り入れたアイテムを駆使されています。
見る側の期待値を上手く上げておいて、脱臼させるやり方はなかなかテクニカルでした。
手先が器用で様々なアイテムを自らの手で作り出せるのは、芥子壺さんの大きな強みですね。
北海道旅行帰りのしろみずさんは、珍道中を鉄道ダジャレのネタに入れたフリップネタを披露。
しろみずさんは、現地を訪れることでネタのインスピレーションが得られるとのこと。
現地に赴くことで、体験が得られリアルな情報が手に入ります。
旅行から帰ってこられると必ず、新しいネタを披露してくださいます。
今回、発表してくださったネタは9/9(土)のOSAKAお笑い寄席で、お客様の前で初お目見えとなります。
次回のお笑い塾は、2週間後の8/26(土)14時~イマイビルの教室にて行われます。
ライブ前に、最後のネタ見せをできる機会ですので、生徒さんもやる気満々のはず。
まだまだ暑い日が続きますが、みなさんなんとか酷暑を乗り切ってくださいね。
また次回も元気にお会いいたしましょう。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
写真・文 高田豪(大阪お笑い塾代表)
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