2025年10月11日の授業レポート「偏見が生み出す笑い」「ネタ見せ」

授業レポート&ライブレポート

こんにちは。大阪お笑い塾の代表の高田豪です。

10/11の夜に、キングオブコントの決勝が放送されましたが、ご覧になりましたでしょうか?

大阪お笑い塾でも、この時期は「このコンテストで誰が優勝するだろうか?」といった予想で盛り上がります。

10月はキングオブコント、そして12月にはM-1と秋や冬はお笑いにとって熱いシーズンですね🔥

偏見が生み出す笑い

まずは発声練習からスタート!

今日は、「偏見をどのようにネタへ組み込むと笑いになるのか?」についてお話いたしました。

サンドウィッチマンのネタで次のようなものがあります。

警察官に扮した富澤さんが、通行人役の伊達さんを「ダイエット中、いいかな?」を呼び止めます。

このネタで富澤さんは、体型いじりをするのですが、笑いを呼ぶのが徹底した決めつけっぷりです。

笑いの本質はズレ。とくに面白いのは、決めつけ型の人が相手の話を聞かずに自分の世界を押し通す瞬間です。

その会話はまるで噛み合っていません。

すんなりといく会話は笑いを生まず、コミュニケーション不成立のズレた会話ほど笑いになります。


「偏見」には人間らしいリアリティがある

笑いになる決めつけには、現実にありそうな偏見が必要です。


理不尽でも、「まあ、そう言いたくなる気持ちはわかる」という程度の理屈。

この「わかるけど違う」の距離感が、最も心地よいズレになります。

たとえば、こんな会話はどうでしょう?


A:「お前、昨日どこ行ってたの?」
B:「駅前だけど?」
A:「あー、わかった。松屋行って、すき家行って、そのあと吉野家やろ?」
B:「行ってないって! なんで牛丼三軒はしごしてんだよ!」


このやりとりには、ちゃんと筋があります。


「太っている」「食いしん坊に見える」など、人が持ちがちな偏見が下地になっていますね。

しかもAの中では完全に理屈が通っていて、Bの否定を受けても修正しない。このわかるようでわからないズレこそが、笑いをもたらすのです。


笑いの構造は、日常会話の中にある

ここまでのやりとろを、構造化すると、こうなります。

  1. A:自分の主観だけで世界を語る(決めつけ)

  2. B:常識的に否定する(説明)

  3. A:相手の言葉をまったく聞かず、さらに確信する(ズレが拡大)

たとえば職質コントも、この型でできています。


警官(A):「お兄さん、ちょっといい? わかりますよ。あなた銀行強盗ですね?」
市民(B):「ちがいますよ」
警官(A):「わかった。これから目出し帽を買いに行くとこだな。そうはさせないよ。署で話を聞こうか」


この警官も、決めつけの典型。


経験や目つきなど、それっぽい根拠を出すから余計にタチが悪いですね。


観客は「いや、話を聞けよ!」とAの不条理さに思わずツッコミを入れながら、Bに共感して笑うのです。


「ちょっと、そうかも…?」と思えるくらいの偏見が大切

笑いを生む決めつけは、デタラメではなく、筋が通って見えるデタラメでなければなりません。

理屈のない暴論では、観客がついてこないのです。

  • 「財布パンパンの人って、だいたい領収書で生きてるタイプやね」

  • 「自分あれやな、スマホの画面バリバリに割れたまま使い続けるタイプやね」

  • 「激辛カレーが好きな人、全員B型説あるねん」

こういう一見無茶な理屈は、完全なウソなのに“ありそう”に聞こえるのかもしれません。

荒唐無稽すぎると笑いにつながりづらいですが、少し「ありそう」が入っていると笑いやすくなります。


決めつけられた側が、いかに困りを表現できるか?

桂枝雀さんは、「笑いの根底には人間の情緒的な困りがある」と指摘されています。

理不尽な決めつけをされた側は、巻き込まれ大いに困ります。

小さな困りが大きな困りに拡大していくと、困りのサイズに比例して笑いも大きくなるでしょう。

実際にコントで実演!

お笑い塾では「学んだことをすぐアウトプットして、定着させよう」をモットーにしています。

今回の「偏見コント」で、とりわけ面白かった方たちをご紹介しましょう。

写真の左側のKさんは、前回、見学に来られ今回から正式に参加された方です。なすぴーとのコンビ。

任侠の世界の住人になりきったKさんに対して、子供をあやすように優しく「どうしたの? 迷子になったの!?」と尋ねるなすぴー。

まさに、わかりやすいすれ違いが表現されていました。


シアリスのツッコミの畠山さんは、通行人のケンさんに「エクスキューズミー」と声を掛けます。

ケンさんの「なんですか?」という日本語の返答を聴いたにもかかわらず、「日本語は話せますか?」とスタンスを崩さない畠山さん。

一徹に決めつけ続ける姿勢が笑いをさそいました。


こちらは鉄道芸人しろみずさんと、シアリスのボケの塚田さんの珍しい組み合わせ。

話が進むにつれて猫カフェだったということが明らかになりました。

スーパーシュールワールド全開でございます🌸


ネタ見せ

大阪お笑い塾では、2か月に一度、主催ライブを行っています。

授業の後半には、ライブに向けたネタ見せが毎回あります。

今回、どんなネタが披露されたのかを見てまいりましょう!


此花六丁目さんは、前回のネタを大きく変えました。

いろいろな要素が入っていたことでわかりづらさのあったネタが、「阪神ファン・ユーチューバー」という軸が定まったことで見やすく変化。

あとは、周囲にいる人との関係性がわかりやすく提示できれば、さらによくなりそうです!


芥子壺さんは、ふたつのネタを披露してくれました!

口角が上がり表情が明るくなって、アイテムも印象づいてきた芥子壺さん。

上がる舞台によって、ネタを上手く使い分けることができれば、さらなる飛躍を見込めそうです。

もともとネタに対する熱量が随一の方ですので、しっかり方向性を定められれば怖いものなしですね🔥


しろみずさんは、印象に残った体験を漫談でまとめてくれました。

これを叩き台にして、次回以降、フリップにしていくとのことでした。

どんなネタになるのか、楽しみです!!


俳句、日本舞踊と多趣味でさまざまな文化に精通しているなすぴー。

今回のネタは、日本舞踊で使う扇子を用いたマイム芸。

「これは何をしているところでしょう?」というクイズ形式ですので、寄席にぴったりな内容ですね。

学校の先生をされていることもあってか、観客を自然に巻き込むのに長けておられます!


最後はシアリスの漫才。

回を重ねるごとに、どんどん良くなるのがシアリスの強みです。

なぜか畠山さんを護衛したがる、塚田さん。なぜの使命感で、ボディーガード役を買ってでますが、巻き込まれた畠山さんは終始困り顔。

まさにコミュニケーションのすれ違いをふんだんに取り込んだ漫才です。

たくさんボケのある楽しいネタですので、3分半~4分に収まるよう、ネタのぜい肉を省くとさらによくなるでしょう。


今回も白熱した大阪お笑い塾のレギュラーコース。

次回は、ライブ前最後の授業になります。

新しい仲間も増えて、さらに盛り上がりそうな予感のあるお笑い塾は、今後も楽しく突き進みますので、なにとぞ応援よろしくお願いします!

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

写真・文 高田豪(大阪お笑い塾・代表)

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