こんにちは!
大阪お笑い塾の代表の高田豪です。
2か月に一度のペースで開催している「OSAKAお笑い寄席」が先日、楽屋Aで開催されました。
早いもので今回が30回目。
1年で6回開催しているので、もう5年も続いているのですね。
初回と比べると、出演者の顔ぶれも変わり、良い意味でどんどん変化している感じがします。
まずは、そちらのライブを振り返りましょう!
……っと、その前に!
7/12(土)の午前中にお笑い塾のビギナーコースの講義が行われました。
下記からお読みいただけますので、よろしくお願いいたします▼
第30回お笑い寄席回顧
7/5(土)楽屋Aで、第30回お笑い寄席が開催されました。
こちら👆は芥子壺さんが作ってくださったチラシ。いい味が出ていますね!
司会を務めてくれたのは、3PEACEのサンズ。
お笑い寄席の初回からお世話になり続けています。
見事、トップバッターとしてライブを盛り上げたオジーサンズ。
漫才の実力が着々とついてきています。
7/13に京都で開催されている「南無1グランプリ」にエントリーするなど、今年もオジーサンズはアグレッシブに活動中🔥
なすぴーは、フリップネタで大きな笑いをかっさらいました。
表現力豊かで独特のセンスをお持ちのため、お客さんを「次、どうなるんだろう?」と前傾姿勢にさせるのがとてもお上手です。
いつもはピンで出ている芥子壺さんは、極楽さんとユニットを結成。
「ブラックジャックになりたい!」という極楽さんのいきなりの提案に、戸惑いつつもつきあう芥子壺さん。
引き芸のイメージが強かった極楽さんが、今回はぐいぐい押すキャラだったので、そこも意外性があってよかったです!
シアリスは、今のトレンドの万博をテーマにした漫才。
途中でボケの塚田さんが、万博のキャラになりきりヘアバンドをつける一幕も。
いつものシアリスワールドに、アイテムがくわわったことでより面白さが出ていました。
たかたかやまは、この表情。
楽しそうな様子が、その顔から伝わってきます。
小気味いい漫才に、笑いが加速しました。
鉄道芸人のしろみずさんは、「しろみずのぼり」と一緒に登場。
ハッピを羽織っての登場。
「アンパンマン」を題材にした、鉄道ダジャレのネタを披露されました。
いつものとぼけっぷりもあり、しろみずさんファンも大満足だったのではないでしょうか。
そしてビギナーコースから、おふたりが初めてお笑い寄席デビュー。
素人場慣れしたハイレベルなコントにお客さんも「しょっぱなからスゲ~!!」という驚きが。
おふたりに挟まれた黒い服の男性は、ビギナーコース、レギュラーコースともに参加しているケンさん。
予期せぬ事態に翻弄される中年男性を、リアルに演じ大きな笑いが起こっていました。
そして、この日一番の笑いをとったといっても過言ではないのが、犬飼さん、塚田さんのコンビ。
ダンスを習いにきた犬飼さんが、自らカリスマ講師と名乗る塚田さんに教わりながらも「この人、ヤベーぞ。大丈夫なんか!?」と、どんどん巻き込まれていくコント。
シアリスのボケの塚田さんは、超強力な大型ボケなので、ばっちりハマるネタでは、とんでもない笑いを巻き起こします。
塚田さんが生きる設定を思いついた犬飼さんの慧眼に頭が下がります。
素晴らしいネタでした!
ネタでしっかり笑いをとり、最後の告知では、しろみずさんに依頼して作ってもらったというのぼりを持参した3PEACEのヒュンゼンさん。
最近、作成したTikTokのアカウントがバズり、なんと海外の方も含め10万人以上のフォロワーを獲得したそうです。
波に乗っていますね!!
サンズは、和尚の幸太郎さんのもとを訪れたふたりが、邪念を振り払うために座禅の修行を行うというコント。
明らかに「パシーン!(※板で肩を叩くやつ)」の基準がおかしい和尚に、「なんでですのん!」と必死で食い下がるたくまさんがユーモラス。
それにしても、レオンさんの上半身裸率、やたらと高いです…笑
エンディングでは、各々が今日の感想や今後の豊富を語りました。
たくさんのお客様にお越しいただいた第30回OSAKAお笑い寄席。
大変盛り上がったのではないかと思います。
演者さん、スタッフさん、素晴らしいライブをありがとうございました。
お越しくださったお客様、本当にいつもありがとうございます!!
恐怖を薄めると笑いになる理由
ここからは7/12のお笑い塾の授業レポートです。
今回は、「恐怖を薄めれば笑いになる」というテーマで、お話いたしました。
「誰かの困りが、なぜ笑いになるのか?」「ループ構造がなぜ困りを生み出すのか?」について、実例とともにわかりやすく解説します。
人の“困りごと”は、誰にとっての恐怖か?
「誰かが困っている姿を見ると、思わず笑ってしまうことがある」
こう聞くと少し残酷に思えるかもしれません。
でも、実はこの反応には明確な心理的メカニズムがあるのです。
心理学には「下方比較」という概念があります。
1954年に社会心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された社会的比較理論の中で、「下方比較」という言葉が使われました。
「下方比較」とは「自分より大変な人を見て、少し安心する」感情。たとえば、バナナの皮で滑る人や、マイクが倒れて慌てる芸人を見て笑ってしまうのは、この下方比較によるものです。
ただし、それは“客観的に見ている”からこそ笑えるのであって、「困っている本人の視点」にカメラを寄せると、そこはけっこうな地獄です。
チャップリンは、こう言いました。
「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」
つまり、誰のカメラで何を見るかによって笑えるか、笑えないかが大きく変わるのです。
なぜ出川哲朗の困りは笑えるのか
同じように困っていても、「笑える困りごと」と「笑えない困りごと」があります。
たとえば、出川哲朗さんや狩野英孝さんが慌てたり転んだりしても、私たちは安心して笑えますよね。
これは、彼ら自身が「笑っていい人」としてのキャラクターを築いているからです。見ている側にとって“緊張のない安心空間”であるため、困っていてもそれが恐怖にならないのです。
逆に、赤ちゃんやお年寄りが道で転びそうになったら、笑うどころではありません。
まず「大丈夫かな?」と心配が先に立ちます。
この違いは「見る人の緊張レベル」がどれだけ高まるかによって生まれます。
お笑いにおける「安全な困りごと」は、見る人に恐怖や不安を与えない程度に薄められているのです。
困りごとは“ループ”で加速
笑いの中には、「一度の困りごとでは終わらない」タイプがあります。それが、ループ構造です。
たとえば、次のようなシチュエーションを想像してみてください。
出口を探して進むが、気づけば同じ場所に戻っている。
扉を開けても開けても、また元の場所に戻る。
この“振り出しに戻る”構造が何度も繰り返されることで、観客は「次はどうなる?」という期待と、「またか!」という脱力感の間で揺さぶられ、笑いが生まれます。
これは「円環構造の不条理」として、多くの物語に応用されています。
笑いは天丼という同じボケを繰り返す行為でも起こります。
しつこく繰り返しというのは、恐怖にもなれば笑いにもなる要素と言えるでしょう。
ループ構造の作品
ループ構造は、古今東西の創作に多数登場します。
落語『天狗裁き』では、男が「夢の話をした」と裁かれ、結局それも夢だったという“堂々巡り”。どこまでが夢でどこまでが現実か、その境目のなさは笑いと恐怖のどちらも含んでいます。
映画『メメント』では、記憶喪失の男が真相に近づくたびに、また記憶がリセットされるという構造。
神話『シーシュポスの神話』では、岩を山に運んでも何度も転がり落ち、終わらない作業を続ける男が描かれます。
タイムリープものと言われるものも、上記の作品に類似するところがありますね。
繰り返される中で少しずつ変化が生まれる、その“差”が笑いのポイントとなるのです。
注目のループ映画『8番出口』
さてこの夏、ループ構造をテーマにした映画『8番出口』が公開されます。
もともとはインディーズゲームとして400円ほどで販売されていたマニアックなものでした。
KOTAKE CREATE(コタケクリエイト)により開発されたウォーキングシミュレーターと呼ばれるゲームソフトは、じわじわ人気を獲得していき、140万本以上売れたそうです。
そしてついに、今年の夏に映画の上映がスタート。
監督は川村元気さん。『君の名は。』『モテキ』『告白』などを手がけてきたヒットメーカーです。
「出口を探すが、何度出ても同じ空間に戻ってくる」という構造そのものが、ホラーでもありコメディでもある。
この“恐怖を薄めて面白さに変える”というテーマが、今回の講義内容と見事にリンクしています。
怖いのに笑える、抜け出したいのに戻ってしまう……。そんな感情のジレンマが、この作品の笑いの鍵でもあるのです。
2025年8月29日(金)全国公開されますので、興味をお持ちの人は「これって笑いなの、それとも恐怖!?」という新たな視点で見ると、より一層、面白いかもしれません。
恐怖と笑いは、紙一重
「怖い」と感じるものは、ある意味で“人間の本音”に直結しています。
その恐怖のエッジを“ちょっと削って”、距離をとって見せることで、笑いは生まれます。
とがりすぎたものは、多くの人に避けられますが、ほどよいとがりがあって安心があるものは好まれます。
困っている人の視点を“ズームアウト”し、繰り返す構造のネタは、緊張と緩和のバランスが絶妙かもしれません。
「緊張をどこまで緩めるか?」が肌感覚で理解できた人は、恐怖の題材を用いて笑いを起こすことができるでしょう。
ネタ見せ
お笑い塾の授業では、最後に毎回ネタ見せを行っています。
次回のお笑い寄席は、9/6(土)。
会場は、いつものライブ喫茶亀です。
早くも次回のライブに向けたネタが発表されました。
こちらは高橋さんと、なすぴーのユニット漫才。
以前、一度ユニットコントライブで組んだことのあるおふたりが漫才に挑戦。
テレビ番組でレポートを任され、自由に動き回るなすぴーと、スタジオから「こらこら」とツッコミを入れる高橋さん。
コミカルなやりとりが繰り広げられました。
4分以内にまとめると、見やすいネタにしあがりあそうですね。
芥子壺さんは以前に考えた山の女神を衣装つきで実演。
山の女神が出てくるファンタジックなコントです。
「誰が何をしている設定なのか?」が少し頭に入りづらい感じでしたので、冒頭でそこをしっかり固める構成に変えると見やすくなります。
迷惑系ユーチューバーという、現代のトレンドを入れていたのがいい着眼点ですね。
シュールな設定ほど、いかに現実的な要素を入れてお客さんが理解しやすい状態を作るのかが求められます。
犬飼さんは、最近ミスが増えてきたことをエピソードトークとして昇華。
「ある習い事をしていて、貴重品をなくしてしまい慌てふためいたこと」を彼女独特の視点で、シニカルに語ってくれました。
メタ認知能力が高い犬飼さんは、自身の一挙一動に、外側からもうひとりの人格がツッコミを入れているような感じ。
なにげない日常の体験が、彼女に手にかかれば起伏に富んだスリルある話になってしまうのは、さすがという他ありません。
シアリスの新ネタは、塚田さんが猫カフェの猫になるというシアリスらしいネタ。
気だるげに「付き合いきれません。もう帰ります」と何度も帰りそうになる畠山さんを、塚田さんが必死に引き留めて、猫としてサービスを提供。
お笑い塾の中で、最も長いコンビ歴を誇るおふたりですが、今年になってかなりはっちゃけられるようになり、さらに参加しているように感じます。
シアリスは、まず叩き台を作って、そこからのブラッシュアップを得意としていますので、ここからどんどんネタのぜい肉をそぎ落とし面白くしていくことでしょう。
次回の授業は、2週間後の7/26(土)14時からです。
今年も酷暑になりそうですので、みなさん熱中症にはくれぐれもご注意くださいね。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。!
高田豪(大阪お笑い塾代表)
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