こんにちは。大阪お笑い塾の代表の高田豪です。
いよいよ今年もM-1の決勝まで、あと一週間となりましたね。
今年は顔ぶれがガラリと変わり、また新しい世代が台頭してきています。
2025年のM-1王者は誰になるのか、今から楽しみです!
「三つのアイテムクイズ」
「3」で裏切り、「3」で落とす。構成力を鍛える
お笑いの世界には、三段落ちという古くからある、しかし絶対的なセオリーがあります。
1で話のきっかけを作り、2でそれを繰り返してパターンや文脈を印象づける。そして、見る側が、ああ、次もこう来るだろうな、と予想した瞬間に、3でその梯子を外し、裏切ることで笑いを生む。これが笑いの基本構造です。
笑いのフリとオチとは、推論の裏切り。
「こう思わせておいて」がフリで、「実はこうでした」がオチなので、まずは文脈を作り最後に意外性を作るのが、理に適ったお笑いの構成方法です。
今回のワークでは、この3という数字の持つリズムと、情報の出し順がもたらす効果を体感していただきました。題して、三つのアイテムクイズ。
せっかくですので、この記事を読んでいるあなたも、実際に出題される側の気持ちで、答えを予想しながら読み進めてみてください。
情報の出し順がフリになる
このワークの目的は、クイズに正解することではありません。 出題する側が、聞き手の頭の中にどのような文脈を作れているか。情報を出す順番を設計する力が試されます。
では、ある人物を思い浮かべてください。その人物を示す、三つのアイテムを順番に出していきます。
●一つ目のアイテム:まだ絞りきれない「抽象的な情報」
まず出されたアイテムは、これです。
「カレーライス」

これだけでは、誰のことだか分かりません。料理の話かな、カレー好きの有名人かな、と、聞き手はまだ広い海原にいる状態です。しかし、ここで、ある人物についての話である、という土台が作られます。
●二つ目のアイテム:少し絞れる「半具体的な情報」
次は、範囲をグッと狭めます。
「野球のバット」

ここで聞き手は、ああ、カレーが好きで、野球に関係する人か、と推測を始めます。1つ目のアイテムと合わさることで、脳内で情報の検索が始まります。
さて、この時点であなたの頭の中には、誰か特定の人物が浮かんでいますか。 この流れなら、あの選手かもしれない。そう予想を立てながら、最後のヒントを見てみましょう。
●三つ目のアイテム:固有で「具体的な決定打」
最後に出すアイテムがこれです。
「51番の野球のユニフォーム」

ここで答えは確定。 正解は、イチローさんです。
イチローさんは現役時代、毎朝カレーを食べていたという有名なエピソードがあります。
ここで、少し振り返ってみましょう。 二つ目のヒント「野球のバット」が出た段階で、もしかして王貞治さんだと思った方はいらっしゃいませんか。
カレーと野球といえば、かつてボンカレーのCMに出演されていた王さんを連想する。これは非常に自然な流れです。
もし王さんを想像していた場合、三つ目で「51番のユニフォーム」が出た瞬間に、王さんじゃなかった、そっちか、という驚きが生まれます(王さんの背番号は1)。
これこそが、構成におけるミスリード(誤誘導)の効果です。
1と2の情報で、ある特定の方向へ聞き手の思考を誘導する。三段落ちで言えば、ここでフリが効いている状態を作っていたわけです。そして3で、予想とは違う、しかし納得のいく正解に着地させる。
並べ方で感情を設計する
もし、順番を変えて、いきなり「51番のユニフォーム」を見せてから「カレーライス」を出していたらどうなっていたでしょうか。 最初から答えが分かってしまい、王貞治さんを想像する余地も、最後に、そうきたか、と納得する感情の動きも生まれません。
漫才の三段落ちも、このクイズも、本質は同じです。
・1と2で、相手にどう思わせるか(文脈作り・ミスリード)
・3で、どう落とすか(裏切り、あるいは納得)
言葉の面白さ以上に、その言葉をどこに置くかという構成こそが、相手の脳内をコントロールする最大の武器になります。
今回のワークを通じて、そんな3の法則の奥深さを感じていただけたのではないでしょうか。
ネタ見せ
来年1月10日(土)にお笑い塾の主催ライブOSAKAお笑い寄席が、玉造のライブ喫茶亀で14時から開催されます。
授業の最後に、そちらに向けたネタ見せが行われました。
どのようなネタが披露されたのかを、見ていきましょう。

なすぴーは、画用紙に得意のイラストを描いたネタ。
とても、わかりやすい!!
洋風のものを和風にアレンジするという、フリとオチがしっかり入った老若男女に伝わる面白い仕上がりになっていました。
絵で伝えられるというのは、強みですね!

此花六丁目さんは、街コンへ紛れ込んだ異形の者という、らしさ前回のネタ。
サム・ライミ監督を敬愛する此花さんならではの、独特の切り口。
あとは、シチュエーションの必然性を入れる、もっと見やすくなるでしょう。

極楽さんは、漫談を披露。
この素材を、いかにネタへと昇華していくかが鍵を握ります。
着眼点が面白い極楽さんなので、フリップにするなど見せ方を整えるだけで、ぐぐっとよくなるでしょう。

芥子壺さんは、ひとり2キャラを演じ切るコント。
ピン芸なのに、漫才を作ってしまったので、やる!
という切り口は面白いですね。
「落語のように、かみしもを切ると目が散りづらいのでは? 間もあかないのでは?」というご意見もありました。
ひとりで複数キャラを演じ分けるネタは、どうしてもお客さんに負荷を与えがちなので、いかに「初見の人が、思案せず軽く見られる状態に整えるか?」という視点が大切です。

鉄道芸人のしろみずさんは、前回、お笑い寄席で上演したネタをブラッシュアップ。
今回の方がボケも増え、楽しいネタになっていました。
笑いの基礎ロジックの天丼は、ボケを何度も繰り返すという技術。今回もボケを繰り返せそうなところがありました。
しろみずさんは天丼の名手ですので、得意技がさらに生きるような構成になると、もっともっと笑いが増えるでしょう。

シアリスは、今回ボケを大幅に増やしました。
そして大きな変化が。
これまでは、ゆったりとしたテンポだったシアリスですが、リズミカルな掛け合いが生まれ新しい漫才の形が見えた感じがいたします。
塚田さんの個性が存分に生かされ、ボケのバリエーションも増え、どんどんよくなっているシアリス。
次のライブがとても楽しみですね。
年内の講義は、次回が最後。
風邪が流行っていますので、みなさん大量管理にはお気をつけくださいね。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!
高田豪(大阪お笑い塾の代表)


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